ベッドの有効性と危険性

下記の記載事項はあくまで一般的な事項であり、全ての方に当てはまることではありません。
福祉用具の選定や使い方に関しては、福祉用具専門相談員や理学療法士、作業療法士などにアドバイスを受け、適切な福祉用具を選んでもらい、使い方の指導を受けてください。

背上げ機能は起き上がり補助機能

モーターの力で背を起こす事ができ、任意の角度で止めることができます。下記のような方々に対して有効的な機能です。

●筋力が衰え、自力で起き上がることが困難な人

横に寝た状態が続くと、全身の筋力が低下し、歩行能力も低下します。また、心肺機能の低下も発生しやすくなります。これにより立ち上がったときに急激な低血圧(起立性低血圧)状態となり転倒し易くなります。

特に、夜中や明け方などトイレに行く場合は、電動背上げ機能を使いゆっくりと起き上がるようにしましょう

●血圧が高い人、低い人

普段から血圧が高く、筋力が大きく低下した人や脳梗塞等により半身麻痺のある人が右の写真のように自力で無理に起き上がると血圧が200mmHgを超える場合があり危険です。電動の背上げ機能を是非、お使いください。

●腰痛の人

右の写真のように背や膝の角度を数度上げると、腰がマットレスと密着し体圧分散が良くなり、腰痛の緩和や床ずれ予防にも効果が期待できます。
また、この角度では内臓に広がりによる肺への圧迫も軽減できますので、呼吸器疾患のある方や体力が落ちた方などにも有効です。

●食べ物をうまく飲み込めない人(嚥下障害/えんげしょうがい)

背を起こした状態やベッドに座らせて少量づつゆっくりと食事をすることで飲み込みやすくなります。食事の後もしばらくは背上げ状態にして胃からの逆流を抑えることが出来ます。

寝た状態での食事は非常に危険です

寝た状態で食事をすると、うまく飲み込めず食べ物が肺に入り「誤嚥性肺炎/ごえんせいはいえん」を起こす原因にもなり非常に危険です。

●介護をする人の腰痛対策

寝ている方の背を起こすだけでも相当の力が必要で、 無理な姿勢で背上げ補助を行うと腰痛のもとになります。

※介護従事者の腰痛発症率は他業種に比べ高いという厚生労働省の指摘もあります。無理な姿勢での介護には十分ご注意ください。

背上げ時の注意事項

●身体の圧迫

背上げや背下げを行うと、寝ている方の身体に圧力やズレ力がかかります。
自分で身体を動かすことのできない人にとっては、非常につらく、痛みも生じ、場合により呼吸困難や床ずれの原因にもなります。
背上げおよび背下げを行った後は、腰から背中、かかとからふとももまで、身体をマットレスから離す「圧抜き」を行いましょう。

背上げ時の圧迫を体験してみましょう

身体を一切動かさないで、背を0度から最大角度にするだけで、どなたでも身体にかかる圧力・ズレ力を体感することができます。ぜひ、圧迫による痛みを体感し、介護に活かしてください。

●横倒れに注意

自分で身体を保持できず、横に倒れてしまうおそれがある人は、最大角度まで上げずに身体を保持できる角度(30-45度以下)に設定してください。
※横に倒れてしまうと右の写真のように首や頭部がレールにあたり、頚動脈や気道を圧迫するなど大きな事故の原因になります。

また、横倒れによるベッドからの転落を予防するため、「ロングサイドレール」か「ベッド用グリップ」の装着をお薦めします。

足上げ機能

糖尿病や心臓病などが原因で足の血管が細くなったり、血の流れが悪化した人が長時間座った状態を続けると、足に向かった血が上がりづらくなり、うっ血した状態になります。この様な時は足を上げて横になることで、うっ血状態を緩和することができます。

※うっ血状態が続くと右の写真のように静脈瘤や動脈が詰まるなどの原因にもなりますので注意が必要です。
※膝上げ角度を単独で調整できるベッドは、3モーターおよび1+1モータータイプになります。

昇降機能(ベッド全体の上下)

昇降機能付きベッドは、モーターの力でベッドを上下させる事ができます。下記のような方々に対して有効的な機能です。

●筋力が衰え自力で立つ事に不安がある人、困難な人

下の写真のように、低すぎる状態から立ち上がるには筋力が必要で、片麻痺の人の場合は転倒の危険性もあります。足の長さからやや高い位置にベッドを上げることで楽に立つことができます。

※自力で立てない人を無理に立たせると、転倒の危険性もあります。車いすを有効に使いましょう。

●腰痛、リウマチの人

立ち上がりやすい高さに調節することで、膝や腰への負担を大幅に軽減でき、痛みの発生を緩和できます。

●血圧が低い人・高い人

血圧が低い方が、急に立ち上がると貧血により倒れることもありますが、ベッドの昇降機能を使い、少しずつ、ゆっくりと立つことで転倒の危険性を軽減できます。背上げ機能と併用してお使いください。

睡眠薬や睡眠導入剤を服用されている方はご注意ください

睡眠薬や睡眠導入剤を服用した後に立ち上がったり、歩いたりすると転倒の危険度が高くなり非常に危険です。事故も多発してます。必ず医師の指導に従い、服用後は定められた時間内はベッドで横になり、決して歩かないようにしてください。

●介護する人の腰痛対策

背上げ同様、座っている人を立ち上がらせるだけでも相当の力が必要で、介助をする人が腰痛になる事もあります。適度な高さにすることで「安全かつ楽に」立ち上がらせることができます。福祉用具を有効に使い「安全で楽な介護」をしてください。

昇降機能のその他の使い方

●端座位(たんざい)

寝た状態が続くと「平衡感覚の低下」「筋力の低下」や「昼夜の感覚が鈍り、夜の徘徊」などが起きやすくなります。よって、昼間はできるだけベッドに座ることが良いとされ、このような行為をベッドの端に座ることから「端座位を取る」と言われてます。この時はベッドの高さを膝下の寸法に合わせ、足裏全面が床に着いている姿勢でお座りください。

※足が床に着いていないとベッドから落ちるなど骨折の原因にもなります。

●車椅子やポータブルトイレからの乗り降り

ベッドから車椅子に移る際は、ベッドの高さが車椅子の座面と水平かやや高く、逆に車椅子からベッドに移る際には、ベッドの高さは車椅子の座面と水平かやや低くすることで、乗り降りをより安全に行うことができます。

スライディングボードと移乗専用シート

他社の製品ですが、ベッドと車いすの間にスライディングボードや移乗専用シートを使うとより安全かつ楽に移乗できます。
使い方を誤ると危険ですので、商品選び、使用方法については販売店の福祉用具専門相談員にお尋ねください。

ベッド用グリップ「ニーパロ」を活用しますと、上記の移乗行為をより安全に行うことができます。

●伝い歩き

ベッドから降り、ベッドを伝い歩きする場合にも、その方に合った歩きやすい高さにすることでより安全に歩行ができます。
※昇降機能があるベッドは、昇降1モーター、2モーター、3モータータイプとなります。

ご注意!

取扱説明書に指定されているサイドレール、ベッド用グリップ以外の物は使用しないでください。同様に、他社製品と組合わせると「危険な隙間」が発生しレールとベッドの間で首を挟むなど重大事故の原因になります。

多発している事故事例やヒヤリハット事例

事例1

立ち上がり、起き上がりに有効なレール関連アイテム

レールとレール、レールとボードの間に首が挟まり窒息

事例2

レールに腕が入った状態で背上げを行い腕を骨折

レールに腕が入った状態で背上げを行い腕を骨折

事例3

体を動かせない人を背上げ状態にして長時間放置。体が横に倒れサイドレールで首を圧迫し呼吸困難

体を動かせない人を背上げ状態にして長時間放置。体が横に倒れサイドレールで首を圧迫し呼吸困難

事例4

ベッド用グリップの固定を確認せず立ちあがり、転倒し腕を骨折

ベッド用グリップの固定を確認せず立ちあがり、転倒し腕を骨折

事例5

キャスターのロック忘れによる壁への追突

キャスターのロック忘れによる壁への追突

事例6

ベッドが低く、背上げ機能を使用せず介護者が腰痛へ

ベッドが低く、背上げ機能を使用せず介護者が腰痛へ

事例7

ベッドと壁の間に落ち込み、胸が圧迫され呼吸困難。壁に密着させるか50cm以上の空間を空けましょう。

ベッドと壁の間に落ち込み、胸が圧迫され呼吸困難。壁に密着させるか50cm以上の空間を空けましょう。

事例8

レールやボードをまたいで乗り降りし、転倒、骨折。

レールやボードをまたいで乗り降りし、転倒、骨折。

事例9

座る位置が浅くお尻から落下

座る位置が浅くお尻から落下

事例10

テーブルを杖代わりに歩行。その後転倒

テーブルを杖代わりに歩行。その後転倒

事例11

テーブルを入れた状態でベッドを上げ、湯飲みが転倒

テーブルを入れた状態でベッドを上げ、湯飲みが転倒

事例12

添い寝している人の腕や足がベッドの下にあり、ベッドを下げることで圧迫骨折

添い寝している人の腕や足がベッドの下にあり、ベッドを下げることで圧迫骨折