長崎県病院企業団
長崎県五島中央病院様
長崎県五島中央病院様は1877年に郡立病院として設立されました。五島市全体をカバーする中核病院として高度医療から医療福祉の教育研修までを担う、304床(2019年5月現在)を有する病院です。
このたび導入いただいたプラッツの医療施設用電動ベッド「P300シリーズ」について、摂食・嚥下障害看護認定看護師の久保様にお話をお伺いいたしました。
導入した製品
患者様2名の改善事例
嚥下機能の改善
今までは食事中に腕が下がったままだった患者様が、ハイバックサポート機能を使って食事をしたところ手の動きがすごく出るようになりました。 通常の背上げをした状態では骨盤の位置で身体のバランスを取ることになるので、体幹が不安定な方はどうしても身体が緊張してしまいます。 それに比べハイバックサポート機能を使用した背上げは、肩甲骨のあたりで身体の重みを一旦受け止めることで安定化が図れるので、上肢が非常に動きやすくなりました。
これは嚥下にもつながっていて、頸部の筋肉の過度な緊張を生まずに済むので、飲み込みがしやすくなります。 また、食事動作を獲得する上でも、上肢が使えるということは非常に大きなメリットです。 自分の手で食べていただくことが一番理想的な嚥下を引き出しやすいので、上肢の動きをサポートしてくれるというのは、嚥下という点についてはすごく優れていると思います。 STにとってはすごく魅力的なベッドではないでしょうか。
それに少し頭が上がることで、目線が食事に向きやすくなります。 頸部前屈位をとっても、どうしても目線が上に、天井の角を見るような感じになってしましますが、ハイバックサポート機能で肩甲骨のあたりから上げた状態で頸部前屈位をつくると、食事のテーブルも見やすく、手も動かしやすくなります。 患者様にとって食事を視認して「食べる」という認識を促すことは重要で、看護師が食べさせるのではなく、患者様自身が口に運ぶ動作をサポートすることができます。
リハビリや食事場面の中で頸部前屈位・頭部前屈位を患者様に取っていただくことが多いですが、ハイバックサポート機能を使ってある程度角度をつけることができるので、ポジショニングは非常に行いやすくなりました。 もちろんクッションを使う方法もありますが、角度を設定できるのでスタッフ間で統一を図れるというのが大きいです。 ベッドへ戻ってきた時に、その度にクッションを用意して、当てなおして、となると大変ですが、ある程度基盤となる脊柱を支える部分の角度はベッドを使って固定できるので、ポジショニングが行いやすいですし、スタッフもいろいろ考えずとも指示がシンプルに終わるので、共有がしやすくなりました。
褥瘡対策に
ある患者様は(P300とは)別のベッドで過ごしてもらったところ仙骨部に褥瘡が発生しかけましたが、ベッドを(P300に)替えケアしたところ発生を防ぐことができました。 もちろんエアマットレスは使用していますが、頚椎損傷の患者様は体動が難しいので通常の背上げをしただけだと仙骨部に褥瘡ができやすいのですが、ハイバックサポート機能を使うと、上体の重みを一旦肩甲骨あたりで受けとめ、腹部から臀部にかけての重みを骨盤で受けとめるというように、体圧分散がうまく出来ているのだと思います。 またベッド上のポジショニングのずれこみが起こりやすいのですが、上肢の重みを一旦肩甲骨のあたりで受けることができているためか、ずれこみが少なく、長時間背上げをしていても過ごしやすいようです。
エアマットレスを使用する際も、自動体位変換機能のついたものは厚みが大きくなるため高さの低いサイドレールだと転落に対して不安がありますが、P300はサイドレールが高く設計されているので問題なく使用できます。 また、サイドレール間・サイドレールとボードのすき間も狭くなっているので、患者様が無理にベッドから立ち上がろうとして転倒してしまうリスクも低減できていると思います。
ベッド上の姿勢保持のサポート
他にも、腹膜透析や経管栄養を行っている患者様で座位が取れない方の姿勢保持にも役立っています。 クッションを使ってポジショニングを行うとずれやすく、次に巡回した際にはクッションが外れサイドレールに身体がもたれかかっているというようなことがありました。 ハイバックサポート機能を使えば角度の微調整がしやすく、ずれもなく、ポジショニングが行いやすくなりました。
ハイバックサポート機能
背上げを「ハイバック:頭-背部」と「ローバック:腰部」の2つに分け、それぞれの角度を調節しながら背上げをおこないます。
1モーター、2モーターポジショニングベッドでは、ハイバックは背上げと連動して動きます。
3モーターポジショニングベッドでは、ハイバックを単独で操作することができます。
背上げ時のズレを抑える膝位置のフィッティング機能
膝位置のフィッティング機能は利用者の大腿部の長さに合わせ、パーツの変更なしでひざ脚ボトムの屈曲位置を2段階に調節できるので、ズレの少ない快適な背上げをサポートします。
「急性期から嚥下にも積極的にアプローチする医療機関として」
病院だけでなく行政も含めた、地域に根差した活動も担っておられます。
院外のSTが回診チームに参加しているのも特徴で、在宅への訪問もされているので急性期から在宅に帰るまでを経過を見ながらフォローアップできるというのは大きな強みとのことです。
医師、認定看護師、ST、管理栄養士、病棟看護師が嚥下チームを組み、週に一度院内ラウンドを実施し食事内容やケアの方法を検討されています。
患者様のケアに対する職種を超えたスタッフ同士の意見交換が非常に印象的でした。
島だより
病室からは五島のシンボル鬼岳や澄みきった海など美しい景色を一望できます。
五島の雄大な自然や美味しい食事の虜になりました!